『生きる LIVING』(原題:Living)は、黒澤明の映画『生きる』をイギリス・ロンドンを舞台にリメイクした作品です。ノーベル賞作家カズオ・イシグロが脚本を手がけ、ビル・ナイが主役を務め、それぞれ第95回アカデミー賞では、脚色賞・主演男優賞にノミネートされました。
『生きる LIVING』の挿入曲
『生きる LIVING』の挿入曲を流れた順番に紹介していきます。(ネタバレにご注意ください)
オープニング
舞台は1953年のロンドンです。街を走るロンドンバスや、世界最古のアーケードと言われるバーリントン・アーケードの風景など、音楽とともに当時の記録映像が楽しめるオープニングです。
弦楽セレナード ホ長調 Op. 22 – 第2楽章
作曲者 | アントニン・ドヴォルザーク(Antonín Dvorák, 1841-1904) 後期ロマン派のチェコの作曲家。 ボヘミアの民俗色豊かな作品を数多く作り、19世紀後半に国際的名声を博した。チェコ国民楽派を代表する作曲家の一人。 |
作曲年 | 1875年 |
Artist | ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker) ベルリンに拠点を置くドイツのオーケストラ。1882年設立。 |
ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan, 1908-1989) オーストリアの指揮者。レパートリーの広さと現代的な解釈で世界的な名声を得て膨大な数の録音を残した。20世紀後半のクラシック音楽界を代表する指揮者。 |
新人職員ピーターが列車に乗り初出勤する
6つの即興曲 Op. 5 – 第5番
作曲者 | ジャン・シベリウス(Jean Sibelius, 1865-1957) 後期ロマン派から近代にかけて活躍したフィンランドの作曲家/ヴァイオリニスト。 帝政ロシアの支配下で愛国心を高めていたフィンランド国民から絶大な支持を受け、国民的英雄としても尊敬を集めた。 |
作曲年 | 1893年 |
『6つの即興曲』は、シベリウスが1893年に作曲したピアノ独奏曲です。
ウィリアムズが役所を早退して医師のもとを訪れる
邦題『ただ二人で』
Artist cover ver. | ジャッキー・グリーソン(Jackie Gleason, 1916-1987) アメリカの俳優/コメディアン/作家/作曲家。 映画『ハスラー』(1961) で伝説のビリヤードプレイヤーを演じ、アカデミー助演男優賞にノミネートされた。 |
リリース | 1952年 |
作曲者 | アーサー・シュワルツ(Arthur Schwartz, 1900-1984) アメリカの作曲家/映画製作者。 代表作『あなたと夜と音楽と』『ザッツ・エンタテインメント』 |
ハワード・ディーツ(Howard Dietz, 1896-1983) アメリカの作詞家/台本作家。 代表作『あなたと夜と音楽と』『ザッツ・エンタテインメント』 | |
Original ver. | 1932年:レオ・レイズマン管弦楽団(Leo Reisman and His Orchestra) |
ウィリアムズと不眠症の作家サザーランドが海辺のカフェレストランで出会う(店のBGM)
ベルガマスク組曲 – 第3曲 月の光
作曲者 | クロード・ドビュッシー(Claude Debussy, 1862-1918) フランス印象派を代表する作曲家。 |
出版年 | 1905年 |
Artist | トミー・ドーシー(Tommy Dorsey、1905-1956) アメリカのジャズトロンボーン奏者/作曲家/指揮者/バンドリーダー。1935年にトミー・ドーシー楽団を結成。 |
『ベルガマスク組曲』は、ドビュッシーが1890年から1905年にかけて作曲したピアノのための組曲です。「前奏曲」「メヌエット」「月の光」「パスピエ」の4曲で構成され、その中でも第3曲「月の光」は単独で演奏されることが多い人気のある作品です。
ウィリアムズがサザーランドと夜の街を楽しむ
ウィリアムズは帽子を取られ、不眠症の劇作家サザーランドに代わりの帽子を手に入れてもらいます。
Artist cover ver. | The Les Brown Orchestra |
レス・ブラウン(Les Brown, 1912-2001) アメリカのジャズミュージシャン/バンドリーダー。 第二次世界大戦の欧州戦線における終戦時にリリースされた『センチメンタル・ジャーニー』(Sentimental Journey)が退役軍人の間で非公式にホームカミングテーマとなり、1945年にヒットチャートで23週連続1位を記録しミリオンセラーを達成した。 | |
作曲者 | ハリー・ウォーレン(Harry Warren, 1893-1981) ニューヨーク出身のイタリア系アメリカ人作曲家。 60年にわたるキャリアの中で800曲以上の曲を書き、それらは300本以上の映画で使われた。『ブロードウェイの子守歌』『You’ll Never Know』『On the Atchison, Topeka and the Santa Fe』でアカデミー歌曲賞を3度受賞した。 |
アーサー・フリード(Arthur Freed, 1894-1973) アメリカの作詞家/ハリウッド映画プロデューサー。 映画『巴里のアメリカ人』(1951)、『恋の手ほどき』(1958) のプロデュースで、アカデミー作品賞を2度受賞した。 | |
Original ver. | 1945年:ケイ・カイザー楽団(Kay Kyser and His Orchestra) |
ウィリアムズがパブでピアニストにリクエストをして歌う
邦題『ナナカマドの木』
『The Rowan Tree』は、スコットランドの民謡です。
この後、以下のシーンでもこの曲が使われています。
「ウィリアムズが雪の降る中、公園のブランコに乗り歌う」
「エンドクレジット」
ウィリアムズとサザーランドがストリップショーのテントに入る(バンドが演奏する曲)
邦題『黒い瞳』
作詞者 | イェウヘーン・フレビーンカ(Yevhen Hrebinka, 1812-1848) ウクライナの詩人/作家。 |
出版年 | 1843年 |
『Dark Eyes』は、世界中で愛されているロシア民謡です。
19世紀初頭にロシア帝国で生まれ1910年代〜1920年代に全盛期となった “ロシア・ロマンス” (ロマ音楽の影響を受けた感傷的な歌曲)の代表曲として知られています。
余命宣告を受けた事を息子夫婦に話せぬまま、時間だけが過ぎていく
邦題『過ぎ去りし日々』
Artist cover ver. | ジャッキー・グリーソン(Jackie Gleason, 1916-1987) アメリカの俳優/コメディアン/作家/作曲家。 映画『ハスラー』(1961) で伝説のビリヤードプレイヤー、ミネソタ・ファッツを演じアカデミー助演男優賞にノミネートされた。 |
リリース | 1954年 |
作曲者 | ジェローム・カーン(Jerome Kern, 1885-1945) ニューヨーク出身のユダヤ系アメリカ人作曲家。 映画『有頂天時代』(1936)、『レディ・ビー・グッド』(1941) の音楽を担当し、アカデミー歌曲賞を2度受賞した。 代表曲『煙が目にしみる』『イエスタデイズ』 |
オットー・ハルバック(Otto A. Harbach, 1873-1963) アメリカの作詞家/台本作家。 20世紀初頭の主要なブロードウェイ作曲家のジェローム・カーン、ジョージ・ガーシュウィンらと作詞家として協力し数多くの作品を作った。またオスカー・ハマースタイン2世の師としても知られる。 | |
Original ver. | 1933年:レオ・レイズマン管弦楽団(Leo Reisman and His Orchestra) |
『Yesterdays』は、アリス・デュアー・ミラーの小説『Gowns by Roberta』を基にした1933年初演のブロードウェイミュージカル『ロバータ』(Roberta)で使用された曲です。
『過ぎ去りし日々』『昨日のこと』の邦題でも知られています。
ウィリアムズとマーガレットが二人で映画を観る
(クレーンゲームしてウサギの人形をとるシーンでもこの曲が流れています。)
ウィリアムズとマーガレットが見ていた映画は、ハワード・ホークス監督による1949年のスクリューボール・コメディ映画『僕は戦争花嫁』(I Was a Male War Bride)です。ケイリー・グラントが主演をつとめています。
ファッシネイション
作曲者 | フェルモ・ダンテ・マルケッティ(Fermo Dante Marchetti, 1876-1940) イタリア生まれのフランスのヴァイオリニスト/ソングライター。 |
モーリス・ド・フェラディ(Maurice de Féraudy, 1859-1932) フランスのソングライター/舞台監督/映画監督/俳優。 |
『Fascination』は、フェルモ・ダンテ・マルケッティが1904年に作った曲です。
ピアノ独奏曲『Valse Tzigane』として出版され、翌年モーリス・ド・フェラディによってフランス語の歌詞がつけられました。
『魅惑のワルツ』の邦題でも知られています。
マーガレットとピーターがデートを重ねる
ホエン・ライツ・アー・ロウ
Artist cover ver. | ヴィック・ダモーン(Vic Damone, 1928-2018) イタリア系アメリカ人歌手/俳優。 |
リリース | 1962年 |
作曲者 | ベニー・カーター(Benny Carter, 1907-2003) アメリカのジャズ・サックス奏者/クラリネット奏者/トランペット奏者/作曲家/編曲家/バンドリーダー。1935年から3年間ヨーロッパに移住しヨーロッパをツアーしてまわり、数々の録音を残した。 |
スペンサー・ウィリアムズ(Spencer Williams, 1889-1965) アメリカのジャズとポピュラー音楽のソングライター/歌手/ピアニスト。 | |
Original ver. | 1936年:ベニー・カーター・カルテット(Benny Carter and His Swing Quartet) |
ウィリアムズが雪の降る中、公園のブランコに乗り歌う
邦題『ナナカマドの木』
「ウィリアムズがパブでピアニストにリクエストをして歌う」でもこの曲が使われていました。
エンディング
トマス・タリスの主題による幻想曲
作曲者 | レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams, 1872-1958) イギリスの作曲家。 |
作曲年 | 1910年 |
Artist | ギレルモ・フィゲロア(Guillermo Figueroa) アメリカのヴァイオリニスト/ヴィオラ奏者/指揮者。 |
モーリン・ギャラガー(Maureen Gallagher) アメリカのヴァイオリニスト。 | |
オルフェウス室内管弦楽団(Orpheus Chamber Orchestra) ニューヨークを拠点とするアメリカのオーケストラ。1972年設立。 |
エンドクレジット
邦題『ナナカマドの木』
「ウィリアムズがパブでピアニストにリクエストをして歌う」でもこの曲が使われていました。
『生きる LIVING』のサントラ
『生きる LIVING』はエミリー・レヴィネイズ・ファルーシュ(Emilie Levienaise-Farrouch)が音楽を担当しました。
エミリー・レヴィネイズ・ファルーシュは、フランス出身ロンドン在住の作曲家です。学生時代に映画音楽を手がけたことが縁で、今でも多数の映像作品で音楽を手掛けています。
『生きる LIVING』のオリジナルサウンドトラックは、ハリウッド・ミュージック・イン・メディア・アワードで作曲賞を受賞しました。

『生きる LIVING』キャスト・スタッフ
監督 | オリヴァー・ハーマナス(Oliver Hermanus) |
脚本 | カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro) |
原作 | 黒澤明 |
橋本忍 | |
小國英雄 | |
製作 | スティーヴン・ウーリー(Stephen Woolley) |
エリザベス・カールセン(Elizabeth Karlsen) | |
音楽 | エミリー・レヴィネイズ=ファルーシュ(Emilie Levienaise-Farrouch) |
配給 | ライオンズゲートUK |
ソニー・ピクチャーズ クラシックス | |
東宝 | |
公開 | 2022年1月21日 |
2022年1月4日 | |
2023年3月31日 | |
上映時間 | 102分 |
ロドニー・ウィリアムズ:ビル・ナイ(Bill Nighy)
マーガレット・ハリス:エイミー・ルー・ウッド(Aimee Lou Wood)
ピーター・ウェイクリング:アレックス・シャープ(Alex Sharp)
サザーランド:トム・バーク(Tom Burke)
ミドルトン – エイドリアン:ローリンズ(Adrian Rawlins)
ラスブリッジャー:ヒューバート・バートン(Hubert Burton)
ハート:オリヴァー:クリス(Oliver Chris)
ジェームズ卿:マイケル・コクラン(Michael Cochrane)
シン:アーナント・ヴァルマン(Anant Varman)
マクマスターズ夫人:ゾーイ・ボイル(Zoe Boyle)
スミス夫人:リア・ウィリアムズ(Lia Williams)
ポーター夫人:ジェシカ・フラッド(Jessica Flood)
フィオナ・ウィリアムズ:パッツィ・フェラン(Patsy Ferran)
マイケル・ウィリアムズ:バーニー・フィッシュウィック(Barney Fishwick)
ブレイク夫人:ニコラ・マコーリフ(Nichola McAuliffe)
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