2023年にアメリカで製作された『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』(原題:A Haunting in Venice)は、イタリア・ヴェネツィアを舞台にした推理映画です。ケネス・プラナーが主演・監督を務める『名探偵ポアロ』シリーズ3作目です。
原作『ハロウィーン・パーティ』は、探偵エルキュール・ポアロシリーズ31作目にあたります。
『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』の挿入曲
『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』の挿入曲を流れた順番に紹介していきます。(ネタバレにご注意ください)
ベネチアの風景 & ポアロの朝
エルキュール・ポアロはイタリアのベネチアで隠遁生活を送っていました。
1947年、@イタリア ベネチア
Artist cover ver. | ヴェラ・リン(Vera Lynn, 1917-2020) イギリスの歌手/エンターテイナー。 第二次大戦中に慰問コンサートで人気を博し「イギリス軍の恋人」と呼ばれた。 |
リリース | 1962年 |
作曲者 | ベニー・ベンジャミン(Bennie Benjamin, 1907-1989) ヴァージン諸島生まれのアメリカの作曲家。ソル・マーカスとの共同執筆で知られる。 |
ソル・マーカス(Sol Marcus, 1912-1976) アメリカのソングライター/ピアニスト。 | |
エディ・ザイラー(Eddie Seiler) 1940年代から1950年代にかけて活動したアメリカのソングライター。 | |
Original ver. | 1942年:ヴォーン・モンロー(Vaughn Monroe, 1911-1973) アメリカのバリトン歌手/トランペット奏者/ビッグバンドのリーダー。 |
『When the Lights Go On Again』は、第二次世界大戦中に作られたポピュラーソングです。
第二次世界大戦時の1940年9月7日〜1941年5月10日の約8カ月間、ロンドンを中心とした英国各地では「ザ・ブリッツ」と呼ばれるドイツ空軍による大規模な空襲がありました。「ザ・ブリッツ」(The Blitz)は、ドイツ語で稲妻を意味します。
ロンドンの家屋の3分の1が破壊され、市民は、防空壕、地下鉄構内などに身を寄せ合って空襲に耐え忍びました。
この曲の歌詞は、「ザ・ブリッツ」に対抗するために課されたロンドンの停電にインスピレーションを得て、人々に希望と静けさを与えるために書かれたと言われています。
タイトルの「When the Lights Go On Again」(邦訳:再び明かりが灯るとき)には、戦争終結への願いがこめられています。
この後、以下のシーンでもこの曲が使われています。
「医師フェリエが虚ろな目で口ずさむ曲」
「地下の隠し部屋を見た医師フェリエが口ずさむ曲」
「エンディング」
アリアドニがポワロをハロウィンの粋な催しに誘う
イン・ザ・ムード
Artist | グレン・ミラー楽団(Glenn Miller and His Orchestra) アメリカのジャズミュージシャン、グレン・ミラーによって1938年に結成されたスウィング・ジャズ・ビッグバンド。 |
リリース | 1939年 |
作曲者 | ジョー・ガーランド(Joe Garland, 1903-1977) アメリカのジャズ・サクソフォーン奏者/作曲家/編曲家。 |
アンディー・ラザフ(Andy Razaf, 1895-1973) アメリカの詩人/作曲家/作詞家。 | |
ウィンギー・マノン(Wingy Manone, 1900-1982) アメリカのジャズ・トランペット奏者/作曲家/歌手/バンドリーダー。 | |
Original ver. | 1938年:エドガー・ヘイズ楽団(Edgar Hayes and His Orchestra) |
『イン・ザ・ムード』は、ジャズのスタンダードナンバーです。
グレン・ミラー楽団のバージョンがヒットしたことで、ビッグバンドの定番レパートリーとなりました。
グレン・ミラーは、1904年アイオワ州生まれのアメリカのトロンボーン奏者です。
1937年にグレン・ミラー楽団を結成。次々とヒット曲を出し映画にも出演するなど人気を博しました。その後、第二次世界大戦が勃発、グレン・ミラーは人気絶頂期に突然バンドを解散し陸軍航空軍に入隊しました。
入隊後は、慰問楽団を率いて慰問演奏を行っていましたが、大戦末期の1944年12月英仏海峡上空を飛行中、乗っていた専用機が消息を断ちグレン・ミラーは行方不明となりました。 遺体は回収されず、その後、死亡が宣言されたそうです。
アコーディオン奏者が船着場で演奏している曲
ポアロがゴンドラに乗って屋敷に向かうシーンまでこの曲が流れています。
邦題『セントルイスで会いましょう』
作曲者 | ケリー・ミルズ(Kerry Mills, 1869-1948) アメリカのラグタイム作曲家。 |
アンドリュー・スターリング(Andrew Sterling, 1874-1955) アメリカの作詞家。 | |
Original ver. | 1904年:ビリー・マレイ(Billy Murray, 1877-1954) アメリカの歌手/レコーディングアーティスト。 |
『Meet Me in St. Louis, Louis』は、セントルイス万国博覧会の開催に合わせて作られたポピュラーソングです。
1944年のミュージカル映画『若草の頃』(原題:Meet Me in St. Louis, )では、主演のジュディ・ガーランドが歌い、再び注目を集めました。
屋敷でのハロウィンパーティ BGM(1曲目)
昔話が終わってこの曲が流れ出すと子供達は元気に屋敷の中を走り回ります。
聖者の行進
『When the Saints Go Marching In』は、アフリカ系アメリカ人のスピリチュアルソングです。
『聖者の行進』『聖者が街にやってくる』の邦題で知られています。
屋敷でのハロウィンパーティ BGM(2曲目)
ドレイク家の家政婦(オルガ)がアリアドニに話しかけるシーンでBGMは変わっています。
邦題『リパブリック讃歌』
作曲者 | ジュリア・ウォード・ハウ(Julia Ward Howe, 1819-1910) アメリカの奴隷制度廃止運動家/政治活動家/詩人。 |
ウィリアム・ステッフ(William Steffe, 1830-1890) アメリカの作曲家。 |
『Battle Hymn of the Republic』は、1862年に発表されたアメリカの愛国歌です。
この曲は、南北戦争で北軍の行軍曲として歌われました。
戦後も広く歌い継がれ、国内外問わず様々な替え歌の原曲としても親しまれています。日本では『ごんべさんの赤ちゃん』『太郎さんの赤ちゃん』がそれにあたります。
ハロウィンパーティで子供達が歌う曲
(ポアロと屋敷の女主人ロウィーナが話をするシーン)
子供達は、バケツに浮かべたリンゴを手を使わずに口で取る「アップルボビング」というゲームを楽しんでいます。「アップルボビング」はハロウィンの定番ゲームとなった、イングランド生まれのゲームです。
『Giro Giro Tondo』は、イタリアに古くから伝わる童謡です。
日本の「かごめかごめ」のように手をつなぎ輪になって歌いながらぐるぐる回る子供の遊びで歌われています。
イタリアの作曲家、オットリーノ・レスピーギ(Ottorino Respighi, 1879-1936)の交響詩『ローマの松』の第1部 ではこの旋律が引用され、子供たちが遊んでいる情景が表現されています。
この後「ポアロにだけ聞こえる ”子供が歌う曲” 」でもこの曲が使われています。
医師フェリエが虚ろな目で口ずさむ曲
作曲者 | ベニー・ベンジャミン(Bennie Benjamin, 1907-1989) ソル・マーカス(Sol Marcus, 1912-1976) エディ・ザイラー(Eddie Seiler) |
Original ver. | 1942年:ヴォーン・モンロー(Vaughn Monroe, 1911-1973) アメリカのバリトン歌手/トランペット奏者/ビッグバンドのリーダー。 |
「ベネチアの風景 & ポアロの朝」でもこの曲が使われていました。
ポアロにだけ聞こえる ”子供が歌う曲”
「ハロウィンパーティで子供達が歌う曲」でもこの曲が使われていました。
ニコラスとデズデモーナの話を聞いてアリアドニが口ずさむ曲
トロリー・ソング
作曲者 | Hugh Martin & Ralph Blane ヒュー・マーティン(Hugh Martin, 1914-2011)とラルフ・ブレイン(Ralph Blane, 1914-1995)の二人によるソングライティング/作曲家コンビ。1940年に結成されたボーカルカルテット「The Martins」で共に活動をしながらパートナーシップを結び、数多くの曲を手がけた。 |
Original ver. | 1944年:ジュディ・ガーランド(Judy Garland, 1922-1969) アメリカの女優/歌手。 ミュージカル映画『オズの魔法使』(1939) で主役ドロシーに抜擢されその才能を世に知らしめ、以降『若草の頃』(1944)、『イースター・パレード』(1948) 、『スタア誕生』(1954) などで主役をつとめるなど国民的ミュージカル・スターとして活躍した。 ハリウッド黄金時代を代表する大スターの一人。 |
『The Trolley Song』は、1944年のミュージカル映画『若草の頃』(原題:Meet Me in St. Louis, )のオリジナル・サウンドトラックです。
地下の隠し部屋を見て医師が口ずさむ曲
作曲者 | ベニー・ベンジャミン(Bennie Benjamin, 1907-1989) ソル・マーカス(Sol Marcus, 1912-1976) エディ・ザイラー(Eddie Seiler) |
Original ver. | 1942年:ヴォーン・モンロー(Vaughn Monroe, 1911-1973) アメリカのバリトン歌手/トランペット奏者/ビッグバンドのリーダー。 |
「ベネチアの風景 & ポアロの朝」でもこの曲が使われていました。
エンディング
Artist cover ver. | ヴェラ・リン(Vera Lynn, 1917-2020) イギリスの歌手/エンターテイナー。 第二次大戦中に慰問コンサートで人気を博し「イギリス軍の恋人」と呼ばれた。 |
リリース | 1962年 |
作曲者 | ベニー・ベンジャミン(Bennie Benjamin, 1907-1989) ヴァージン諸島生まれのアメリカの作曲家。ソル・マーカスとの共同執筆で知られる。 |
ソル・マーカス(Sol Marcus, 1912-1976) アメリカのソングライター/ピアニスト。 | |
エディ・ザイラー(Eddie Seiler) 1940年代から1950年代にかけて活動したアメリカのソングライター。 | |
Original ver. | 1942年:ヴォーン・モンロー(Vaughn Monroe, 1911-1973) アメリカのバリトン歌手/トランペット奏者/ビッグバンドのリーダー。 |
「ベネチアの風景 & ポアロの朝」でもこの曲が使われていました。
『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』のサントラ

『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』はヒドゥル・グドナドッティル(Hildur Guðnadóttir)が音楽を担当しました。ヒドゥル・グドナドッティルは、アイスランド出身の作曲家/女性チェリストです。アイスランドのエレクトロニカバンド、ムームのメンバーとしても知られています。
『ジョーカー』の映画音楽で、第92回アカデミー作曲賞を受賞しました。
『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』キャスト・スタッフ
監督 | ケネス・ブラナー(Kenneth Branagh) |
脚本 | マイケル・グリーン(Michael Green) |
原作 | アガサ・クリスティ(Agatha Christie) |
製作 | ケネス・ブラナー(Kenneth Branagh) |
リドリー・スコット(Ridley Scott) | |
ケヴィン・J・ウォルシュ(Kevin J. Walsh) | |
ジュディ・ホフランド(Judy Hofflund) | |
配給 | ウォルト・ディズニー・ジャパン |
公開 | 2023年9月15日 |
2023年9月15日 | |
上映時間 | 103分 |
エルキュール・ポアロ:ケネス・ブラナー(Kenneth Branagh)
アリアドニ・オリヴァ:ティナ・フェイ(Tina Fey)
ロウィーナ・ドレイク:ケリー・ライリー(Kelly Reilly)
アリシア・ドレイク:ローワン・ロビンソン(Rowan Robinson)
マキシム・ジェラード:カイル・アレン(Kyle Allen)
オルガ・セミノフ:カミーユ・コッタン(Camille Cottin)
ドクター・レスリー・フェリエ:ジェイミー・ドーナン(Jamie Dornan)
レオポルド・フェリエ:ジュード・ヒル(Jude Hill)
ヴィターレ・ポルトフォリオ:リッカルド・スカマルチョ(Riccardo Scamarcio)
ジョイス・レイノルズ:ミシェル・ヨー(Michelle Yeoh)
ニコラス・ホランド:アリ・カーン(Ali Khan)
デズデモーナ・ホランド:エマ・レアード(Emma Laird)
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