2002年に制作された映画『戦場のピアニスト』(原題:The Pianist)は、ユダヤ系ポーランド人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンが1946年に出版した『ある都市の死』(原題:Śmierć miasta)を基につくられた戦争映画です。1939年〜1945年までのポーランドが舞台となっています。
第55回カンヌ映画祭ではパルムドールを受賞、第75回アカデミー賞では作品賞を含む7部門にノミネートされ、ロマン・ポランスキーが監督賞、ロナルド・ハーウッドが脚色賞、エイドリアン・ブロディが主演男優賞を受賞しました。
- 『戦場のピアニスト』の挿入曲
- 1939年ワルシャワ、ラジオ局のスタジオでシュピルマンがピアノを演奏する
- 英国がドイツに宣戦布告したことをシュピルマンの家族がラジオで知る(ラジオで流れる曲)
- ドイツ兵がユダヤ人を無理やり踊らせる(ゲットー内の踏切で演奏されている曲)
- シュピルマンがレストランでピアノを演奏する
- 強制労働を終えてゲットーに戻るシュピルマン達が、酔ったドイツ兵に命じられ陽気な歌を合唱しながら歩く
- 1943年4月19日、隠れ家の隣人がピアノで演奏するのをシュピルマンが壁に耳を当てて聞く
- ソファーで眠るシュピルマンがドロタのチェロの演奏で目を覚ます
- ドロタの夫が提供した隠れ家で、シュピルマンがピアノの蓋を開けて指を宙で動かす
- 病院に隠れているシュピルマンが、椅子に座り指を宙で動かす
- シュピルマンが廃墟の屋根裏部屋に缶詰を持って隠れる(誰かが廃墟で演奏するピアノ曲)
- ホーゼンフェルトに命じられてシュピルマンが廃墟でピアノを演奏する
- ドイツ軍撤退後、廃墟となった街を一台のトラックが走る(トラックの拡声器で流されている曲)
- 戦後、シュピルマンがラジオ局のスタジオでピアノを演奏する
- エンディング&エンドクレジット
- 『戦場のピアニスト』のサントラ
- 『戦場のピアニスト』キャスト・スタッフ
『戦場のピアニスト』の挿入曲
『戦場のピアニスト』の挿入曲を流れた順番に紹介していきます。(ネタバレにご注意ください)
1939年ワルシャワ、ラジオ局のスタジオでシュピルマンがピアノを演奏する
(オープニングシーン)
突然の爆撃があり収録は途中で中止されます。
夜想曲第20番 嬰ハ短調(遺作)
作曲者 | フレデリック・ショパン(Frédéric Chopin, 1810-1849) ポーランド出身の作曲家/ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト。 ピアノ独奏曲を数多く残し「ピアノの詩人」と称される。 |
作曲年 | 1830年 |
『夜想曲第20番 嬰ハ短調(遺作)』は、ショパンが1830年に作曲したピアノ独奏曲です。没後の1875年に出版されました。
『戦場のピアニスト』は、ユダヤ系ポーランド人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン(Władysław Szpilman)の体験記を脚色して作られています。
ウワディスワフ・シュピルマンは、ショパン音楽院とベルリン音楽大学でピアノを学び、ポーランドの国営放送局ラジオ・ポーランド(Polskie Radio)でクラシックやジャズを演奏するピアニストとして活動していました。
この後「戦後、シュピルマンがラジオ局のスタジオでピアノを演奏する」でもこの曲が使われています。
英国がドイツに宣戦布告したことをシュピルマンの家族がラジオで知る(ラジオで流れる曲)
ドンブロフスキのマズルカ
作詞者 | ユゼフ・ヴィビツキ(Józef Wybicki, 1747-1822) ポーランドの法学者/詩人/政治家/軍人。 |
『ドンブロフスキのマズルカ』は、ポーランドの国歌です。
1795年、プロイセン・オーストリア・ロシアの3国によってなされた第三次ポーランド分割で、ポーランドはヨーロッパの地図上から事実上姿を消すこととなりました。 この2年後に書かれたのがこの抵抗歌です。
この歌は「11月蜂起」以降ポーランドの非公式な国歌と見なされ、1927年に議会で正式に国歌として制定されました。『ポーランドは未だ滅びず』のタイトルでも知られています。
この後「ドイツ軍撤退後、廃墟となった街を一台のトラックが走る(トラックの拡声器で流されている曲)」でもこの曲が使われています。
ドイツ兵がユダヤ人を無理やり踊らせる(ゲットー内の踏切で演奏されている曲)
(ドイツ兵が、踏切が開くのを待つユダヤ人に「寒いなら踊れ」と命じるシーン)
『Tantz tantz yidelekh』は、ユダヤの民謡です。
「Tantz」とは、イディッシュ語で「ダンス」を意味する言葉です。
シュピルマンがレストランでピアノを演奏する
リリース | 1937年:Soundtrack『Neighbors』 |
作曲者 | ヘンリー・ヴァース(Henry Vars, 1902-1977) ポーランド生まれのアメリカ人の作曲家/編曲者/指揮者。 ポーランドではヘンリク・ウォーズ(Henryk Wars)の名でポピュラー音楽や映画音楽の作曲家として活躍していた。 |
『Umowilem sie z nia na dziewiata』は、ポーランドのミュージカルコメディ映画『Neighbors』(原題:Piętro wyżej)のオリジナル・サウンドトラックです。
この後「1943年4月19日、隠れ家の隣人がピアノで演奏するのをシュピルマンが壁に耳を当てて聞く」でもこの曲が使われています。
強制労働を終えてゲットーに戻るシュピルマン達が、酔ったドイツ兵に命じられ陽気な歌を合唱しながら歩く
(訳:ライフル兵の行進)
作曲者 | ヴワディスワフ・アンチツ(Wladyslaw Anczyc, 1823-1883) ポーランドの詩人/劇作家/翻訳者/民俗活動家。 ロシア帝国占領下のヴィリニュスで生まれ、人生の大半をポーランド南部の都市クラクフで過ごし同地で亡くなった。 |
作曲年 | 1863年 |
『Marsz Strzelcow』は、1月蜂起の前夜に書かれたものだと伝えられています。
1943年4月19日、隠れ家の隣人がピアノで演奏するのをシュピルマンが壁に耳を当てて聞く
リリース | 1937年:Soundtrack『Neighbors』 |
作曲者 | ヘンリー・ヴァース(Henry Vars, 1902-1977) ポーランド生まれのアメリカ人の作曲家/編曲者/指揮者。 ポーランドではヘンリク・ウォーズ(Henryk Wars)の名でポピュラー音楽や映画音楽の作曲家として活躍していた。 |
「シュピルマンがレストランでピアノを演奏する」でもこの曲が使われていました。
ソファーで眠るシュピルマンがドロタのチェロの演奏で目を覚ます
無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV 1007 – プレリュード
作曲者 | ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750) バロック時代を代表するドイツの作曲家/オルガニスト。 宗教音楽や器楽曲など幅広いジャンルで多くの傑作を残し、西洋音楽の歴史の中で最も偉大な作曲家の一人と評される。 |
『無伴奏チェロ組曲』は、バッハがチェロ独奏用に作った全6曲からなる組曲です。
組曲はそれぞれプレリュードで始まり、ひとつの調性で統一され作られた6曲で構成されています。
ドロタの夫が提供した隠れ家で、シュピルマンがピアノの蓋を開けて指を宙で動かす
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22 – ポロネーズ
作曲者 | フレデリック・ショパン(Frédéric Chopin, 1810-1849) ポーランド出身の作曲家/ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト。 ピアノ独奏曲を数多く残し「ピアノの詩人」と称される。 |
作曲年 | 1831年 |
『アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22』は、もともとは管弦楽とピアノのために作られた協奏曲的作品です。ここで使われている管弦楽とピアノからなる「ポロネーズ」が1831年に先に書かれ、前奏(アンダンテ・スピアナート)部分はピアノ独奏として1834年に書き加えられました。
現在、リサイタルで演奏されることの多いピアノ独奏版は、1836年に出版されました。
この後「エンディング&エンドクレジット」でもこの曲が使われています。
病院に隠れているシュピルマンが、椅子に座り指を宙で動かす
バラード第1番 ト短調 作品23
作曲者 | フレデリック・ショパン(Frédéric Chopin, 1810-1849) ポーランド出身の作曲家/ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト。 ピアノ独奏曲を数多く残し「ピアノの詩人」と称される。 |
作曲年 | 1831-1835年 |
ショパンが、パリ滞在中の1831年から1835年に作曲した最初のバラード(譚詩曲)です。
この後「ホーゼンフェルトに命じられてシュピルマンが廃墟でピアノを演奏する」でもこの曲が使われています。
シュピルマンが廃墟の屋根裏部屋に缶詰を持って隠れる(誰かが廃墟で演奏するピアノ曲)
ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調「月光」 Op. 27, No. 2 – 第1楽章
作曲者 | ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827) ドイツの作曲家。ウィーンの古典音楽を最高の発展に導き、ロマン派音楽への道を切り開いた音楽史において極めて重要な作曲家の一人。聴力を失いながらも音楽への情熱を燃やし続け、数々の名曲を生み出したその偉業から日本では「楽聖」として称えられる。 |
作曲年 | 1801年 |
ホーゼンフェルトに命じられてシュピルマンが廃墟でピアノを演奏する
バラード第1番 ト短調 作品23
作曲者 | フレデリック・ショパン(Frédéric Chopin, 1810-1849) ポーランド出身の作曲家/ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト。 ピアノ独奏曲を数多く残し「ピアノの詩人」と称される。 |
作曲年 | 1831-1835年 |
「病院に隠れているシュピルマンが、椅子に座り指を宙で動かす」でもこの曲が使われていました。
ドイツ軍撤退後、廃墟となった街を一台のトラックが走る(トラックの拡声器で流されている曲)
ドンブロフスキのマズルカ
作詞者 | ユゼフ・ヴィビツキ(Józef Wybicki, 1747-1822) ポーランドの法学者/詩人/政治家/軍人。 |
「英国がドイツに宣戦布告したことをシュピルマンの家族がラジオで知る(ラジオで流れる曲)」でもこの曲が使われていました。
戦後、シュピルマンがラジオ局のスタジオでピアノを演奏する
夜想曲第20番 嬰ハ短調(遺作)
作曲者 | フレデリック・ショパン(Frédéric Chopin, 1810-1849) ポーランド出身の作曲家/ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト。 ピアノ独奏曲を数多く残し「ピアノの詩人」と称される。 |
作曲年 | 1830年 |
1939年9月23日、シュピルマンによるライブ放送が行われている最中にラジオ局はドイツ軍の爆撃を受け、これが戦争が終わるまでに聞かれた最後の上演となりました。
1945年、ラジオ局が再建されて仕事を再開したシュピルマンは、6年前に中断したこの曲を演奏したそうです。
「1939年ワルシャワ、ラジオ局のスタジオでシュピルマンがピアノを演奏する」でもこの曲が使われていました。
エンディング&エンドクレジット
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22 – ポロネーズ
作曲者 | フレデリック・ショパン(Frédéric Chopin, 1810-1849) ポーランド出身の作曲家/ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト。 ピアノ独奏曲を数多く残し「ピアノの詩人」と称される。 |
作曲年 | 1831年 |
「ドロタの夫が提供した隠れ家で、シュピルマンがピアノの蓋を開けて指を宙で動かす」でもこの曲が使われていました。
『戦場のピアニスト』のサントラ

『戦場のピアニスト』はヴォイチェフ・キラール(Wojciech Kilar)が音楽を担当しました。ヴォイチェフ・キラールはポーランド出身の作曲家です。前衛的な交響詩『クシェサニ』で世界的に知られています。
1970年以降は映画音楽も多数手掛けており、ジェーン・カンピオンの『ある貴婦人の肖像』やロマン・ポランスキーの『ナインスゲート』でも音楽を担当しています。
『戦場のピアニスト』キャスト・スタッフ
監督 | ロマン・ポランスキー(Roman Polanski) |
脚本 | ロナルド・ハーウッド(Ronald Harwood) |
ロマン・ポランスキー(Roman Polanski) | |
原作 | ウワディスワフ・シュピルマン(Władysław Szpilman) |
製作 | ロマン・ポランスキー(Roman Polanski) |
ロベール・ベンムッサ(Robert Benmussa) | |
アラン・サルド(Alain Sarde) | |
音楽 | ヴォイチェフ・キラール(Wojciech Kilar) |
配給 | アミューズピクチャーズ |
公開 | 2002年9月25日 |
2003年2月15日 | |
上映時間 | 150分 |
ウワディスワフ・シュピルマン:エイドリアン・ブロディ(Adrien Brody)
ヴィルム・ホーゼンフェルト陸軍大尉:トーマス・クレッチマン(Thomas Kretschmann)
ドロタ:エミリア・フォックス(Emilia Fox)
ユーレク:ミハウ・ジェブロフスキー(Michał Żebrowski)
ヘンリク:エド・ストッパード(Ed Stoppard)
父:フランク・フィンレー(Frank Finlay)
母:モーリン・リップマン(Maureen Lipman)
ナチス親衛隊将校:ワーニャ・ミュエス(Wanja Muesbene)
リパ:リチャード・リディングス(Richard Ridings)
ベネク:アンドゼ・ブルーメンフェルド(Andrzej Blumenfeld)
ヤニナ:ルース・プラット(Ruth Platt)
マヨレク:ダニエル・カルタジローン(Daniel Caltagirone)
アンジェイ(ヤニナの夫):ロナン・ヴィバート(Ronan Vibert)
ミルカ(ドロタの夫):ヴァレンタイン・ペルカ(Valentine Pelka)
イーツァク・ヘラー(ユダヤ人警察):ロイ・スマイルズ(Roy Smiles)
ハリーナ:ジェシカ・ケイト・マイヤー(Jessica Kate Meyer)
レギーナ:ジュリア・レイナー(Julia Rayner)
イェフーダ:ポール・ブラッドリー(John Bennett)
エーリック:ジョン・ベネット(John Bennett)
グリュン:シリル・シャプス(Cyril Shaps)
羽根飾りのレディ:ノミ・シャロン(Nomi Sharron)
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