『オン・ザ・ロック』の挿入曲とサントラ | 解説付き全曲紹介Filmmusik
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ソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)
ビル・マーレイ(Bill Murray)

『オン・ザ・ロック』の挿入曲とサントラ

2020年にアメリカで制作された『オン・ザ・ロック』(原題:On the Rocks)は、NY在住の女流作家が、夫の浮気疑惑を父に相談したことから起こる出来事を描いた作品です。

ソフィア・コッポラが監督・脚本をつとめ、ビル・マーレイが父役を、ラシダ・ジョーンズが娘役を演じました。

『オン・ザ・ロック』の挿入曲

『オン・ザ・ロック』の挿入曲を流れた順番に紹介していきます。(ネタバレにご注意ください)

オープニング

I Fall in Love Too Easily
作曲:Sammy Cahn and Jule Styne
オリジナル版:Frank Sinatra(1945)
アーティスト:Chet Baker

『I Fall in Love Too Easily』は、ジャズのスタンダードナンバーです。
映画やミュージカルの名曲を数多く残した作詞家サミー・カーンとソングライター、ジューリー・スタインが作った曲で、1945年の米・ミュージカル映画『錨を上げて』でフランク・シナトラが歌い人気となりました。『錨を上げて』は、第18回アカデミー賞でミュージカル映画音楽賞を受賞しています。

ここでは、アメリカのジャズ・トランペット奏者/ボーカリスト、チェット・ベーカーのバージョンが使われています。

ローラが娘マヤを学校に送るシーン

In Re Don Giovanni
作曲:Michael Nyman
アーティスト:Michael Nyman
リリース年:1982年

マイケル・ナイマン(Michael Nyman)は、1944年ロンドン生まれのミニマル・ミュージックの作曲家です。アメリカの作曲家ジョン・ケイジを研究し著書を出版し、1980年代からは映画音楽の作曲家としても活動しています。

『In Re Don Giovanni』は、アルバム『Michael Nyman』に収録されています。

娘テオの幼児教室でみんなが歌う曲

The Wheels on the Bus
作曲:Gavin Courtie and Liz Radford

『The Wheels on the Bus』は、20世紀前半に作られたアメリカの民謡です。
リズムに合わせて体を動かし歌う人気の遊び歌で、英語圏の子供を中心に世界中で親しまれています。日本では『バスのうた』『バスのタイヤ』のタイトルで知られています。

ディーンの会社のパーティ BGM

Find Me
作曲:Aaron Maine
アーティスト:Porches
リリース年:2018年

ポーチーズ(Porches)は、ニューヨークを拠点とするミュージシャン、アーロン・メイン(Aaron Maine)によるシンセ・ポップ・プロジェクトです。
『Find Me』は、ポーチーズの3枚目のスタジオアルバム『The House』に収録されています。

娘の名前はここからとったと言いフェリックスが車の中で歌う曲

Laura
作曲:David Raksin and Johnny Mercer
オリジナル版:Alfred Newman(1944)

『Laura』は、ジャズのスタンダードナンバーです。
もともとは、アメリカの作曲家デイヴィッド・ラクシンが1944年のアメリカミステリ映画『ローラ殺人事件』のために書いた曲です。曲のヒット後に、アメリカの作詞家ジョニー・マーサーによって詩がつけられました。


ローラの父フェリックスの登場シーンです。
フェリックスとローラが口笛で吹くのもこの曲です。

ローラとフェリックスがバレエ教室にマヤを迎えに行くシーン

Assemblé No.1
作曲:Michael Zeigler
アーティスト:Venti Petrov

『Assemblé No.1』は、バレエレッスンで使われる曲です。
ニューヨークでバレエ講師を務めているベンティ・ペトロフ監修のCDに収録されています。

フェリックスがローラの家に入る時に歌う曲

‘A’ You’re Adorable
作曲:Buddy Kaye, Sidney Lippman and Fred Wise
オリジナル版:The Buddy Kaye Quintet(1948)

『’A’ You’re Adorable』は、1948年に発表された人気曲です。アメリカのエンターテイナー、ペリー・コモが歌い広く知られるようになりました。

アメリカの子ども向けテレビ教育番組「セサミストリート」では、1969年〜1970年の放送開始当初、アルファベットを学ぶ遊び歌として、この曲が使われていました。


バレエ教室からの帰り、フェリックスは孫達に風船を買ってあげ、家に入る時には歌詞を変えてこの曲を歌い孫達を喜ばせています。

フェリックスが車で自宅に戻るシーン

4 Impromptus, Op.90, D.899 – No.3 in G-Flat Major: Andante
作曲:Franz Schubert
演奏:Alfred Brendel

フランツ・シューベルト作曲の『4つの即興曲 作品90 D 899』より第3番です。オーストリアのピアニスト、アルフレート・ブレンデルの演奏が使われています。

『4つの即興曲 作品90 D 899』はシューベルトが亡くなる前年(1827)に作曲されたピアノ独奏曲です。ここで使われている3番は、シューベルトの生前には発表されず、死からだいぶ経った1857年に出版されました。


ローラの家を出たフェリックスは、エントランスでディーンと出くわし挨拶程度の会話を交わしました。その後、自宅に戻るシーンでこの曲が流れます。

フェリックスとローラがディーンのいる会場に車で向かうシーン

In Orbit
作曲:Clark Terry
アーティスト:Clark Terry Quartet & Thelonious Monk
リリース年:1958年

『In Orbit』は、アメリカのジャズトランペット/フリューゲルホルン奏者のクラーク・テリー(Clark Terry)が作った曲です。

ビバップのパイオニアの一人と評されるジャズピアニスト、セロニアス・モンクとクラーク・テリーの共演によるアルバム『Clark Terry Quartet With Thelonious Monk』に収録されています。

尾行中のフェリックスとローラが車の中でキャビアを食べるシーン

Nessuno
作曲:Edilio Capotosti and Antonietta de Simone
オリジナル版:Betty Curtis – Gianni Ferrio e la sua orchestra(1959)
アーティスト:Mina

『Nessuno』は、1959年にイタリアで開催された第9回サンレモ音楽祭で発表された曲です。

ここで使われているのは、イタリアの人気女性歌手ミーナのカバーバージョンです。

バーでピアニストが演奏している曲

Martini Tears
作曲:Earl Rose
アーティスト:Earl Rose

『Martini Tears』は、アメリカの作曲家/ピアニスト、アール・ローズ(Earl Rose)の作品です。


フェリックスとローラが訪れるのは、ニューヨークにある伝説のホテル、カーライル内の、ベーメルマンス・バー(Bemelmans Bar)です。
児童文学『マドレーヌ』を書いた絵本作家、ルドウィッヒ・ベーメルマンス自筆の絵が壁一面にあり、ウッディ・アレン監督がクラリネットを演奏していたことでも知られている老舗ジャズバーです。

このシーンで演奏しているアール・ローズは、ベーメルマンス・バーで30年近く演奏を続けてきたピアニストです。

ローラが考え込み元気をなくすシーン

I Get Along Without You Very Well (Except Sometimes)
作曲:Hoagy Carmichael
オリジナル版:Larry Clinton and His Orchestra(1939)
アーティスト:Chet Baker

『I Get Along Without You Very Well (Except Sometimes)』は、ジャズのスタンダードナンバーです。
名曲『スターダスト』を作ったことで知られるアメリカの歌手/ピアニストのホーギー・カーマイケルが作った曲です。1939年にリリースされたヴィブラフォン奏者レッド・ノーヴォのバージョンのヒットにより広く知られるようになりました。

この曲は、ショパンの『即興曲第4番 嬰ハ短調 遺作 作品66』(幻想即興曲)の中間部の主題を用いて作られています。

ここでも、チェット・ベーカー(Chet Baker)のバージョンが使われています。
チェット・ベーカーは、1929年アメリカオクラホマ州生まれのジャズ・トランペット奏者/ボーカリストです。
ウエストコースト・ジャズ・シーンの代表的トランペット奏者で、その甘いルックスから「ジャズ界のジェームス・ディーン」と呼ばれ人気を博しました。


ディーンは自分に興味を失ったのでないかとローラが気落ちするシーン。フェリックスは優しくローラを励まします。
@アメリカ ニューヨーク、ベーメルマンス・バー(Bemelmans Bar)

フェリックスが知り合いの誕生パーティーにローラを連れて行くシーン

It Might as Well Be Spring
作曲:Richard Rodgers and Oscar Hammerstein II
オリジナル版:Dick Haymes with Victor Young and His Orchestra(1945)
アーティスト:The Bill Evans Trio(1962)

『It Might as Well Be Spring』は、『春の如く』の邦題でも知られているジャズのスタンダードナンバーです。
この曲は、1945年の米・ミュージカル映画『ステート・フェア』(原題:State Fair)のオリジナルサウンドトラックです。リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン2世の作曲家コンビは、この曲でアカデミー歌曲賞を受賞しています。

ここでは、モダン・ジャズを代表するピアニスト、ビル・エヴァンスが率いるトリオの演奏が使われています。


フェリックスは、家主に見つからないようにローラをクロード・モネの「睡蓮」が飾ってあるコーナーに連れて行きます。そしてローラに絵を見せながらローラの母との思い出話を語りました。

フェリックスとローラがゴルフカートでコンドミニアムに向かうシーン

Guadalajara
作曲:Pepe Guízar
オリジナル版:Tito Guizar con guitarras(1936)
アーティスト:Mariachi Guadalajara de Silvestre Vargas

『グアダラハラ』(Guadalajara)は、メキシコの作曲家ペペ・ギザールが作った有名なマリアッチの歌です。
グアダラハラは、メキシコの中西部に位置する北米有数の世界都市です。スペイン植民地時代の建築様式が数多く残り、その街並みの美しさから「西部の真珠」と呼ばれています。
作曲家ギザールは、この都市「グアダラハラ」に敬意を表して曲を書きました。

ここでは、メキシコのマリアッチ音楽家シルベストレ・バルガス(Silvestre Vargas)が率いる楽団の演奏が使われています。


@メキシコ

メキシコの海岸近くのバーでフランクが歌う曲

Mexicali Rose
作曲:Helen Stone and Jack Tenney
オリジナル版:International Novelty Orchestra(1923)

『Mexicali Rose』は、ラテンのスタンダードナンバーです。
アメリカのバンドリーダー/ピアニストのジャック・テニーが1920年代初頭に作り、カリフォルニアとメキシコの国境近くの街カレクシコのホテルやクラブで演奏されていました。
1930年代半ばにリリースされたジーン・オートリーとビング・クロスビーのバージョンがヒットしたことでスタンダードナンバーとなりました。


@メキシコ

エンドクレジット

Identical
作曲:Phoenix
アーティスト:Phoenix
リリース年:2020年

『Identical』は、この映画の音楽を担当したフランスのインディー・ロックバンド、フェニックスの作品です。アルバム『Identical』に収録されています。

『オン・ザ・ロック』のサントラ

『オン・ザ・ロック』はフェニックス(Phoenix)が音楽を担当しました。フェニックスは、フランス・ヴェルサイユ生まれの4人で結成されたロックバンドです。多くのソフィア・コッポラ作品に音楽を提供しています。

『オン・ザ・ロック』キャスト・スタッフ

監督ソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)
脚本ソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)
製作ソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)
ユーリー・ヘンリー(Youree Henley)
音楽フェニックス(Phoenix)
配給 東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
公開 2020年10月2日
2020年10月2日
上映時間97分

フェリックス:ビル・マーレイ(Bill Murray)
ローラ:ラシダ・ジョーンズ(Rashida Jones)
ディーン:マーロン・ウェイアンズ(Marlon Wayans)
フィオナ:ジェシカ・ヘンウィック(Jessica Henwick)
ヴァネッサ:ジェニー・スレイト(Jenny Slate)
テオ:アレクサンドラ&アナ・ライナー(Alexandra and Anna Reimer)
グラン:バーバラ・ベイン(Barbara Bain)
オキャラハン巡査:マイク・ケラー(Mike Keller)

『ヴァージン・スーサイズ』の挿入曲とサントラ
映画『ヴァージン・スーサイズ』は、『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』を原作としたソフィア・コッポラの初監督作品です。キルスティン・ダンストやジョシュ・ハートネットが出演しています。電話でレコードをかけ流す曲など使われた音楽を流れた順に紹介します。
『ロスト・イン・トランスレーション』の挿入曲とサントラ
アカデミー脚本賞受賞、ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』は東京を訪れたハリウッドスターとアメリカ人女性の恋愛映画です。ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソンが出演しています。カラオケで歌う曲など使われた音楽を流れた順に紹介します。
『マリー・アントワネット』の挿入曲とサントラ
ソフィア・コッポラ監督、キルスティン・ダンスト主演の『マリー・アントワネット』はマリー・アントワネットの結婚からフランス革命までの人生を描いた歴史映画です。バウ・ワウ・ワウやスージー・アンド・ザ・バンシーズの曲など、使われた音楽を流れた順に紹介します。
『SOMEWHERE』の挿入曲とサントラ
ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞作、ソフィア・コッポラ監督による映画『SOMEWHERE』は、ハリウッドスターと11歳の娘の交流を描いた作品です。ポールダンスの曲など、使われた音楽を流れた順に紹介します。
『ブリングリング』の挿入曲とサントラ
ソフィア・コッポラの映画『ブリングリング』は、ハリウッドで実際に起きた強盗事件に着想を得て作られた青春映画です。カニエ・ウェストの『All of the Lights』やフランク・オーシャンの『Suoer Rich KIds』など、使われた音楽を流れた順に紹介します。
『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』の挿入曲とサントラ
ソフィア・コッポラの映画『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』は、南北戦争中のアメリカが舞台のサイコスリラー映画です。原作小説は『白い肌の異常な夜』というタイトルで過去にも映画化されています。使われた音楽を流れた順に紹介します。
『オン・ザ・ロック』の挿入曲とサントラ
A24制作映画『オン・ザ・ロック』はソフィア・コッポラ監督・脚本のファミリードラマ作品です。NYやメキシコを舞台に、父と娘の交流が描かれています。バーで流れていた曲やローラの名前の由来となった曲など、使われた音楽を流れた順に紹介します。
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