1946年にアメリカで制作された映画『素晴らしき哉、人生!』(原題:It’s a Wonderful Life)は、1945年のクリスマスイブに起こる奇跡を描いたファンタジー作品です。
第19回アカデミー賞では、作品賞を含む5部門にノミネートされました。
- 『素晴らしき哉、人生!』の挿入曲
- ベッドフォード・フォールズの住人達がジョージ・ベイリーの為に祈る
- ジョージを心配する人々の祈りが天に届く
- 二級天使のクラレンスが大天使のもとにやってくる
- ジョージの母が夕食前にバカ騒ぎをする息子達を大声で注意する(ジョージと弟ハリーが2階で歌う)
- 卒業パーティのチャールストンコンテストでジョージとメアリーが一緒に踊る
- プールに落ちてジャージに着替えたジョージとローブを羽織るメアリーが帰り道に二人で歌う
- ハリーが恋人を連れて帰宅し、機嫌良く酔っ払ったビリー叔父さんが缶や瓶にぶつかりよろけながら自宅に戻っていく(叔父さんが歌う)
- 外でタバコを吸うジョージに母親がメアリーの話をする(家の中で流れる曲)
- ジョージとメアリーがライスシャワーで祝福され新港旅行に出発する
- ジョージがメアリーが待つワルドルフ屋敷に入る(蓄音機から流れる曲)
- 土砂降りの雨の中ワルドルフ屋敷のポーチでアーニーと(タクシードライバー)とバート(警官)が歌う
- 新しい住宅が並ぶベイリーパークに引越しの荷物を積んだトラックが入って行く
- ポッターからの申し出を断りジョージが自宅に戻る(メアリーがベッドで歌い妊娠した事を告げる)
- 第二次世界大戦が始まる
- ハリーの名誉勲章受賞の記事が掲載された号外をジョージが配る
- ジョージがビリー叔父さんが失くした現金を見つけられず絶望して帰宅する(娘がピアノをさらう)
- ポッターのところを出た後、ジョージが「マーティの店」で酒を飲む(店で女性が歌う)
- 「マーティの店」でジョージが男に殴られる(店で女性が歌う)
- ジョージが助けた老紳士が橋の管理人小屋で服を乾かす
- クラレンスがバートに手錠で拘束される寸前に消える
- ジョージの家に町の人々が寄付金を持って沢山集まってくる(娘がピアノを演奏し皆で歌う)
- ハリーが空港から駆けつけ皆がジョージを囲み歌う
- 『素晴らしき哉、人生!』のサントラ
- 『素晴らしき哉、人生!』キャスト・スタッフ
『素晴らしき哉、人生!』の挿入曲
『素晴らしき哉、人生!』の挿入曲を流れた順番に紹介していきます。(ネタバレにご注意ください)
ベッドフォード・フォールズの住人達がジョージ・ベイリーの為に祈る
邦題『神の御子は今宵しも』
『Adeste Fideles』は、イギリスに古くから伝わるクリスマスキャロルです。
ラテン語で書かれたオリジナルの歌詞から『Adeste Fideles』のタイトルが付けられていますが、英語の歌詞から『O Come, All Ye Faithful』のタイトルでも知られています。
ジョージを心配する人々の祈りが天に届く
アヴェ・マリア
作曲者 | ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750) バロック時代を代表するドイツの作曲家/オルガニスト。 宗教音楽や器楽曲など幅広いジャンルで多くの傑作を残し、西洋音楽の歴史の中で最も偉大な作曲家の一人と評される。 |
シャルル・グノー(Charles Gounod, 1818-1893) フランスの作曲家。優雅で美しい旋律と色彩感に満ちたハーモニーが特徴。「フランス近代歌曲の父」と呼ばれ今日も広く愛されている。 | |
作曲年 | 1859年 |
『Ave Maria』は、フランスの作曲家シャルル・グノーが、ラテン語の聖句「アヴェ・マリア」を歌詞に1859年に完成させた声楽曲です。
バッハが1722年に完成させた『平均律クラヴィーア曲集 第1巻』の「前奏曲 第1番 ハ長調 BWV 846」にグノーの作ったメロディをのせる形で作られています。
二級天使のクラレンスが大天使のもとにやってくる
邦題『きらきら星』
『Twinkle Twinkle Little Star』は、18世紀にフランスで人気のあった童謡『Ah! vous dirai-je, maman』(邦訳:あのね、お母さん)をもとに作られた英語の子守唄です。
この曲は、様々な言語に翻訳され世界中で歌われています。
この後、以下のシーンでもこの曲が使われています。
「ジョージが川に飛び込み助けた老紳士が橋の管理人小屋で服を乾かす」
「クラレンスがバートに手錠で拘束される寸前に消える」
ジョージの母が夕食前にバカ騒ぎをする息子達を大声で注意する(ジョージと弟ハリーが2階で歌う)
『Buffalo Gal』は、伝統的なアメリカ民謡です。
ミンストレル・ショーのパフォーマー、ジョン・ホッジス(John Hodges)によって1844年に『Lubly Fan』のタイトルで出版されました。
ニューヨーク州バッファローの運河地区のバーや娼館で働く踊り子についてが歌われており、ミンストレル・ショーでは地元の聴衆に合わせて都市名を変更するなどされアメリカ全土で広く親しまれました。
この後、以下のシーンでもこの曲が使われています。
「プールに落ちてジャージに着替えたジョージとローブを羽織るメアリーが帰り道に二人で歌う」
「ポッターからの申し出を断りジョージが自宅に戻る(メアリーがベッドで歌い妊娠した事を告げる)」
卒業パーティのチャールストンコンテストでジョージとメアリーが一緒に踊る
チャールストン
作曲者 | ジェームズ・P・ジョンソン(James P. Johnson, 1894-1955) アメリカのピアニスト/作曲家。 ストライドピアノのパイオニアとして知られ、デューク・エリントン、セロニアス・モンクらに大きな影響を与えた |
セシル・マック(Cecil Mack, 1873-1944) アメリカの作曲家/作詞家/音楽出版会社の経営者。 代表曲『チャールストン』『Shine』 |
『Charleston』は、1920年代のアメリカで一世を風靡したチャールストン・ダンスを踊るために作られた曲です。
プールに落ちてジャージに着替えたジョージとローブを羽織るメアリーが帰り道に二人で歌う
「ジョージの母が夕食前にバカ騒ぎをする息子達を注意する(ジョージと弟ハリーが2階で歌う)」でもこの曲が使われていました。
ハリーが恋人を連れて帰宅し、機嫌良く酔っ払ったビリー叔父さんが缶や瓶にぶつかりよろけながら自宅に戻っていく(叔父さんが歌う)
マイ・ワイルド・アイリッシュ・ローズ
作曲者 | チョーンシー・オルコット(Chauncey Olcott, 1858-1932) アイルランド系アメリカ人の舞台俳優/ソングライター/歌手。 |
『My Wild Irish Rose』は、1899年にニューヨークの14丁目劇場で初演されたミュージカル『A Romance of Athlone』のために作られた曲です。
外でタバコを吸うジョージに母親がメアリーの話をする(家の中で流れる曲)
アバロン
作曲者 | ヴィンセント・ローズ(Vincent Rose, 1880-1944) イタリア出身のアメリカ人バイオリニスト/作曲家/バンドリーダー。 |
バディ・G・デシルバ(Buddy G. DeSylva, 1895-1950) アメリカのソングライター/映画プロデューサー。キャピトル・レコードの創設者の一人。 | |
アル・ジョルソン(Al Jolson, 1886-1950) リトアニア生まれのアメリカ人歌手/俳優。 ミンストレルショーを彷彿とさせる黒塗りの顔でアフリカ系アメリカ人を演じ、ジャズやブルースなどの伝統的音楽をアメリカに広めることで成功を収める。「ブラックフェイス・パフォーマーの王様」と称される。 | |
Original ver. | 1918年:アル・ジョルソン(Al Jolson, 1886-1950) |
『Avalon』は、1918年初演のブロードウェイ・ミュージカル『シンドバッド』でアル・ジョルソンによって披露された曲です。タイトルは、避暑地として有名なカリフォルニア州のサンタカタリナ島の街アバロン(Avalon)にちなみつけられました。
冒頭のメロディーはプッチーニのオペラ『トスカ』のアリア「星は光りぬ」(原題:E lucevan le stelle)から引用され作られています。
ジョージとメアリーがライスシャワーで祝福され新港旅行に出発する
劇付随音楽《夏の夜の夢》Op.61 – 第9番「結婚行進曲」
作曲者 | フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn, 1809-1847) ドイツ・ロマン派の作曲家/指揮者/ピアニスト/オルガニスト。 |
作曲年 | 1842年 |
『夏の夜の夢』は、シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』をもとに作られた劇付随音楽です。
メンデルスゾーンが17歳の時に書いた作品(序曲『夏の夜の夢』ホ長調 作品21)に感銘をうけたプロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世の勅命により、その主題を序曲として組み込む形で作られました。
ジョージがメアリーが待つワルドルフ屋敷に入る(蓄音機から流れる曲)
作曲者 | チャールズ・E.・キング(Charles E. King, 1874-1950) アメリカのソングライター/作曲家/教育者。1918年に出馬しハワイ準州選出の議員を務めた。 |
作曲年 | 1915年 |
土砂降りの雨の中ワルドルフ屋敷のポーチでアーニーと(タクシードライバー)とバート(警官)が歌う
作曲者 | キャリー・ジェイコブス=ボンド(Carrie Jacobs-Bond, 1862-1946) アメリカの歌手/ピアニスト/ソングライター。 『I Love You Truly』の大ヒットにより「100万枚の曲を販売した最初の女性」として知られるようになった。 |
出版年 | 1901年 |
Original ver. | 1912年:エルシー・ベイカー(Elsie Baker, 1883-1971)イリノイ州シカゴ出身のアメリカの歌手/女優。 |
『I Love You Truly』は、キャリー・ジェイコブス=ボンドによって書かれたパーラー・ソングです。 結婚式で歌われる人気曲となり、キャリー・ジェイコブス=ボンドはホワイトハウスに何度も招待され毎回この曲を歌ったそうです。
新しい住宅が並ぶベイリーパークに引越しの荷物を積んだトラックが入って行く
オー・ソレ・ミオ
作曲者 | ジャンカルロ・キアラメッロ(Giancarlo Chiaramello, 1859-1920) イタリアの詩人/作詞家。 |
エドゥアルド・ディ・カプア(Eduardo Di Capua, 1865-1917) イタリアの作曲家/歌手/ソングライター。 | |
ジョヴァンニ・カプッロ (Giovanni Capurro, 1859-1920) イタリアの詩人/作詞家。 | |
作曲年 | 1898年 |
『O Sole Mio』は、よく知られているカンツォーネ(ナポリ民謡)の代表曲です。
ナポリ語で書かれた歌詞は世界中で翻訳され様々な言語で歌われています。
『オー・ソレ・ミオ』は「私の太陽」を意味します。
ポッターからの申し出を断りジョージが自宅に戻る(メアリーがベッドで歌い妊娠した事を告げる)
「ジョージの母が夕食前にバカ騒ぎをする息子達を注意する(ジョージと弟ハリーが2階で歌う)」でもこの曲が使われていました。
第二次世界大戦が始まる
作曲者 | アーヴィング・バーリン(Irving Berlin, 1888-1989) ベラルーシ出身のユダヤ系アメリカ人作曲家。 映画『スイング・ホテル』(1942) の劇中歌『ホワイト・クリスマス』を書き、アカデミー歌曲賞を受賞した。 |
『This Is the Army, Mr. Jones』は、1943年のアメリカ・ミュージカルコメディ映画『This Is the Army』のミュージカルナンバーです。
ハリーの名誉勲章受賞の記事が掲載された号外をジョージが配る
邦題『ジョニーが凱旋するとき』
作曲者 | パトリック・ギルモア(Patrick Gilmore, 1829-1892) アイルランド生まれのアメリカの作曲家/軍楽隊長。 |
『When Johnny Comes Marching Home』は、南北戦争時に両軍の兵士によって歌われた人気の民謡/行進曲です。
戦争で戦う家族や友人の帰還を願う思いが歌われています。
ジョージがビリー叔父さんが失くした現金を見つけられず絶望して帰宅する(娘がピアノをさらう)
邦題『天には栄え』
作曲者 | チャールズ・ウェスリー(Charles Wesley, 1707-1788) イギリスの聖公会聖職者。 |
フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn, 1809-1847) ドイツ・ロマン派の作曲家/指揮者/ピアニスト/オルガニスト。 |
『Hark! The Herald Angels Sing』は、イギリス発祥のクリスマスキャロルです。
多くの賛美歌を書いたことで知られるメソジスト運動の指導者チャールズ・ウェスリーが、ドイツの作曲家フェリックス・メンデルスゾーンのカンタータのメロディに歌詞をのせて作りました。
この後「ジョージの家に町の人々が寄付金を持って沢山集まってくる(娘がピアノを演奏し皆で歌う)」でもこの曲が使われています。
ポッターのところを出た後、ジョージが「マーティの店」で酒を飲む(店で女性が歌う)
ヴィエニ・ヴィエニ
作曲者 | ヴァンサン・スコット(Vincent Scotto, 1874-1952) フランスの作曲家。マルセル・パニョル監督の映画音楽を手がけたことで知られる。 |
アンリ・ヴァルナ(Henri Varna, 1887-1969) | |
ジョージ・コジェ(Georges Koger, 1894-1975) | |
作曲年 | 1934年 |
「マーティの店」でジョージが男に殴られる(店で女性が歌う)
サンタ・ルチア
作曲者 | エンリコ・コッソヴィチ(Enrico Cossovich, 1822-1911)イタリアの詩人/ジャーナリスト。 |
テオドロ・コットラウ(Teodoro Cottrau, 1827-1879)イタリアの作詞家/作曲家/出版者。 |
『サンタ・ルチア』は、イタリア・ナポリの伝統的な民謡です。
18世紀初頭に作られたオペラが原曲と言われています。ナポリ語で歌われていたものをテオドロ・コットラウがイタリア語に翻訳し1849年に出版しました。
サンタ・ルチアとは、ナポリの街の守護聖人シラクサのルチアを意味し、歌詞ではナポリ湾の波止場地区「ボルゴ・サンタ・ルチア」の美しさを讃える内容が歌われています。
ジョージが助けた老紳士が橋の管理人小屋で服を乾かす
邦題『きらきら星』
「二級天使のクラレンスが大天使のもとにやってくる」でもこの曲が使われていました。
クラレンスがバートに手錠で拘束される寸前に消える
邦題『きらきら星』
「二級天使のクラレンスが大天使のもとにやってくる」でもこの曲が使われていました。
ジョージの家に町の人々が寄付金を持って沢山集まってくる(娘がピアノを演奏し皆で歌う)
邦題『天には栄え』
作曲者 | チャールズ・ウェスリー(Charles Wesley, 1707-1788) イギリスの聖公会聖職者。 |
フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn, 1809-1847) ドイツ・ロマン派の作曲家/指揮者/ピアニスト/オルガニスト。 |
「ビリー叔父さんが失くした現金を見つけられずジョージが絶望して帰宅する(娘がピアノをさらう)」でもこの曲が使われていました。
ハリーが空港から駆けつけ皆がジョージを囲み歌う
オールド・ラング・サイン
作曲者 | ロバート・バーンズ(Robert Burns, 1759-1796) スコットランドの詩人/作詞家。 |
Original ver. | 1890年:エミール・ベルリナー(Emile Berliner, 1851-1929) |
『オールド・ラング・サイン』は、スコットランドの民謡です。日本では『蛍の光』の原曲として知られています。
英語圏の国々では、大晦日のカウントダウンで年が明けた瞬間にこの曲が歌われます。
『素晴らしき哉、人生!』のサントラ
『素晴らしき哉、人生!』は、ディミトリ・ティオムキン(Dimitri Tiomkin)が音楽を担当しました。
ディミトリ・ティオムキンはロシア帝国領ウクライナ出身の作曲家です。『真昼の決闘』『紅の翼』でアカデミー作曲賞を受賞しました。

『素晴らしき哉、人生!』キャスト・スタッフ
監督 | フランク・キャプラ(Frank Capra) |
脚本 | フランセス・グッドリッチ(Frances Goodrich) |
アルバート・ハケット(Albert Hackett) | |
フランク・キャプラ(Frank Capra) | |
原作 | フィリップ・ヴァン・ドーレン・スターン(Philip Van Doren Stern) |
製作 | フランク・キャプラ(Frank Capra) |
音楽 | ディミトリ・ティオムキン(Dimitri Tiomkin) |
配給 | 日本RKOラジオ映画 |
公開 | 1946年12月20日 |
1954年2月6日 | |
上映時間 | 130分 |
ジョージ・ベイリー:ジェームズ・ステュアート(James Stewart)
メアリー・ハッチ:ドナ・リード(Donna Reed)
ヘンリー・ポッター:ライオネル・バリモア(Lionel Barrymore)
ビリー・ベイリー:トーマス・ミッチェル(Thomas Mitchell)
クラレンス・オドバディ:ヘンリー・トラヴァース(Henry Travers)
ジョージの母親:ボーラ・ボンディ(Beulah Bondi)
アーニー:フランク・フェイレン(Frank Faylen)
バート:ワード・ボンド(Ward Bond)
バイオレット:グロリア・グレアム(Gloria Grahame)
ガウワー:H・B・ワーナー(H. B. Warner)
サム・ウェインライト:フランク・アルバートソン(Frank Albertson)
ハリー・ベイリー:トッド・カーンズ(Todd Karns)
ジョージの父親:サミュエル・S・ハインズ(Samuel S. Hinds)
ティリー:メアリー・トリーン(Mary Treen)
ルース・ダキン:ヴァージニア・パットン(Virginia Patton)
ユースタス:チャールズ・ウィリアムズ(Charles Williams)
ニック:シェルドン・レナード(Sheldon Leonard)
不動産会社の販売員:チャールズ・レイン(Charles Lane)
ヨセフの声:ジョセフ・グランビー(Joseph Granby)
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