ギリシャ・アテネ生まれの映画監督ヨルゴス・ランティモス(Yorgos Lanthimos)。『ギリシャの鬼才』とも評されるランティモスは、優れた観察眼と鋭い社会風刺描写で国際的に高い評価を得て『Greek Weird Wave Movements (ギリシャの奇妙な波)』と呼ばれるムーブメントを作り出した映画監督です。
2023年、第80回ヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映された最新作『哀れなるものたち』は、金獅子賞を受賞するなど、各方面から注目を集めています。
このコラムでは、日本未公開作品も含め、ヨルゴス・ランティモスが監督をつとめた映画と作中で使われたオススメの曲をご紹介します。
ヨルゴス・ランティモス監督映画を年代順に紹介
ヨルゴス・ランティモスが監督した映画を年代順に紹介します。印象的な挿入曲とあわせて紹介しているので、ぜひ聴きながら楽しみください。
2005年 – キネッタ(原題:Kinetta)
ヨルゴス・ランティモス監督が初めて単独で監督した長編映画は、2005年に製作された『キネッタ』(原題:Kinetta)です。ギリシャの西アッティカにある海辺の街キネッタ(キネタ)に集まった見ず知らずの3人(男・女・カメラマン)が殺人現場の再現VTRのようなものを撮影する様子が淡々と描かれています。
ギリシャ語で撮影されていますが、2024年現在、日本語字幕・吹き替え版はリリースされていません。(セリフが少ないため、英語版ならある程度観やすいかと思います。)
オススメ曲:Mi Mou Pis Tipota
2009年 – 籠の中の乙女
ヨルゴス・ランティモス2作目の監督作品は、2003年に製作された映画『籠の中の乙女』(原題:Κυνόδοντας/英題:Dogtooth)です。日本で公開された初めてのランティンモス作品となります。(配給会社:彩プロ)
両親によって外の世界から完全に隔離して育てられた3人の子供たちの生活と葛藤が描かれている風刺映画です。
第83回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、第62回カンヌ国際映画祭では、ある視点部門グランプリを受賞しました。
オススメ曲:Fly Me to the Moon
2011年 – アルプス
ヨルゴス・ランティモス3作目の監督作品は、2011年に製作された映画『アルプス』(原題:Άλπεις/英題:Alps)です。劇場公開時は日本未公開でしたが、2024年現在ではJAIHO(ジャイホー)で日本語字幕版が配信されています。
故人になりきり、遺族と過ごす代行サービス『アルプス』の活動が描かれた不条理コメディです。
オススメ曲:Popcorn
2015年 – ロブスター
ヨルゴス・ランティモス4作目の監督作品は、2015年に製作された映画『ロブスター』(原題:The Lobster)です。コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥらが出演しており、ランティモス監督初の英語作品となります。
独身が許されず、パートナーを見つけなければ動物に変えられてしまう近未来を描いたSF恋愛映画です。第89回アカデミー脚本賞にノミネートされ、第68回カンヌ国際映画祭では審査員賞を受賞しました。
オススメ曲:String Quartet No.8 in C Minor, Op.110 – IV. Largo
2017年 – 聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア
ヨルゴス・ランティモス5作目の監督作品は、2017年に製作された映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(原題:The Killing of a Sacred Deer)です。古代アテナイの詩人エウリピデスによるギリシア悲劇『アウリスのイピゲネイア』にインスピレーションを得て作られています。
今作で、ヨルゴス・ランティモスとエフティミス・フィリップが第70回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞しました。
オススメ曲:ヨハネ受難曲 BWV 245「主よ、我らの支配者よ」
2018年 – 女王陛下のお気に入り
ヨルゴス・ランティモス6作目の監督作品は、2018年に製作された映画『女王陛下のお気に入り』(原題:The Favourite)です。ランティモス監督初の歴史映画になります。18世紀初頭、グレートブリテン王国の女王だったアンとその側近(サラ・ジェニングスとアビゲイル・メイシャム)のせめぎ合いが描かれています。
第91回アカデミー賞では作品賞・監督賞を含む9部門で10ノミネート(エマ・ストーン/レイチェル・ワイズがそれぞれ助演女優賞にノミネート)され、オリヴィア・コールマンがアカデミー主演女優賞を受賞しました。
第70回カンヌ国際映画祭では監督賞を受賞しました。
オススメ曲:Skyline Pigeon
2023年 – 哀れなるものたち
ヨルゴス・ランティモス7作目の監督作品は、2023年に製作された映画『哀れなるものたち』(原題:Poor Things )です。スコットランドの作家アラスター・グレイによる同名小説が原作です。
19世紀末、ヴィクトリア朝のロンドン・グラスゴーで妊娠中の女性が身投げしたものの、天才的な外科医に胎児の脳を移植され蘇らされるSFブラック・コメディ映画です。
第80回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、第81回ゴールデングローブ賞では、作品賞と主演女優賞(どちらもミュージカルまたはコメディ部門)を受賞しました。
日本では2024年1月26日に公開されました。
『哀れなるものたち』のサントラ
ヨルゴス・ランティモス監督映画まとめ
ヨルゴス・ランティモスが監督した長編映画を全て紹介しました。アイロニックで社会風刺の効いた脚本だけでなく、年々壮大で美しさを増す映像美からも目が離せません。
今後、初期作品も日本語化・配信されることを願いつつ、注目し続けたい監督の一人です。
コメント